過去に書いたPythonスクリプトを久しぶりに開いて、
「……これ、何やってるんだっけ?」と固まった経験はありませんか。
変数名は短く、処理は長く、コメントもほとんどない。
しかも書いたのは間違いなく“自分”なのに、他人のコードより理解できない。
Pythonを学び始めた人ほど、一度はこの絶望を味わいます。
でも安心してください。
これはセンスや才能の問題ではありません。
Pythonスクリプトが「後から触れなくなる」最大の原因は、初心者のうちに無意識で身についた書き方・考え方の癖です。
Pythonはとても柔軟な言語なので、多少雑でも「とりあえず動くもの」が簡単に作れます。
その分、設計や整理を後回しにすると、小さな負債が静かに積み上がっていきます。
そして数週間、数か月後。
その負債は「読む気がしないコード」「修正が怖いコード」となって、
未来の自分に牙をむきます。
この記事では、Python初心者がやりがちな
「後から触れなくなるスクリプト」を生み出す原因をランキング形式で整理し、
今のうちに潰しておくべき癖と、考え方の修正ポイントを解説します。
コードを“書き捨て”で終わらせず、
「あとから触れる」「直せる」「育てられる」状態にしたい方は、
ぜひこのまま読み進めてください。
結論
Pythonスクリプトが「後から触れなくなる」原因は、
難しい技術を知らないことでも、勉強量が足りないことでもありません。
本当の正体は、初心者のうちに無意識で積み上げてしまう
小さな設計ミスと、放置された癖の集合体です。
多くの人は、こんな流れで負債を作ってしまいます。
- とりあえず動く形を最優先する
- 「後で直そう」と思いながら放置する
- 機能追加だけを重ねる
- 気づいた頃には、読むのも修正するのも怖いコードになる
この時点で、「自分はセンスがないのかも…」と感じてしまう人が多いのですが、
それは完全に誤解です。
保守できないコードは、能力の問題ではなく“設計判断の積み重ね”の結果です。
逆に言えば、考え方と習慣を少し変えるだけで、誰でも改善できます。
この記事では、
- なぜPythonは「後から触れなくなるコード」が生まれやすいのか
- 初心者が特にやりがちな致命的な癖は何か
- 今すぐ実践できる、現実的な回避策
この3点を、できるだけ抽象論を避けて解説していきます。

「動けばOK」から卒業して、
未来の自分が読んで直せるコードを書けるようになりたい方は、
次の章から一緒に原因を整理していきましょう。
Pythonスクリプトが「後から触れなくなる」原因ランキング
第1位:意図が書かれていないコード
後から触れなくなるPythonコードで、
圧倒的に多い原因が「意図が分からないコード」です。
ここで勘違いされやすいのが、
「コメントがない=ダメ」という単純な話ではありません。
たとえば、処理の流れ自体は読めるコードでも、
- なぜこの処理順なのか
- なぜこの値を使っているのか
- どんな前提条件を想定しているのか
こうした設計の背景が一切残っていないと、
数か月後の自分にとってはブラックボックスになります。
初心者のうちは、
- 「今は分かっているから大丈夫」
- 「コメントはあとで書けばいい」
と考えがちですが、これはほぼ確実に失敗します。
なぜなら、コードを書いた直後が一番“理解度が高い瞬間”だからです。
時間が経つほど、「なぜそう書いたか」は驚くほど抜け落ちます。
特に危険なのが、
- 関数の責務が広すぎる
- 戻り値の意味がコードから読み取れない
- 例外が起きたときの想定が分からない
こうしたコードです。
処理は読めても、安心して触れるかどうかは別問題になります。
この問題を防ぐために有効なのが、
- Docstringで「何をする関数か」を言語化する
- 引数・戻り値・前提条件を文章で残す
- 「なぜこの設計にしたか」を短く書く
といった習慣です。

コメントは「処理の説明」ではなく、
設計意図を未来に引き継ぐためのメモだと考えると、
後から触れなくなる確率は一気に下がります。
第2位:リファクタリングされない「育ちっぱなしコード」
次に多いのが、
「動いているから」という理由で放置され続けたコードです。
Python初心者の多くが、こんな経験をします。
- 最初は短いスクリプトだった
- 要望が増えて if や処理を足した
- 関数が長くなったけど、とりあえず動く
この段階では、まだ危機感はありません。
むしろ「成長している気がする」瞬間です。
しかし問題はここからです。
処理が増えるたびに、
- 関数が100行を超える
- 引数が増え続ける
- どこを直せばいいのか分からなくなる
こうしてコードは静かに“触れない領域”へ変わっていきます。
初心者がよく言うのが、
「落ち着いたらまとめよう」「時間ができたら整理しよう」です。
でも実際には、そのタイミングはほぼ来ません。
なぜなら、リファクタリングは
「壊すリスクがある作業」だからです。
コードが大きくなるほど、心理的ハードルも上がります。
だからこそ大切なのは、
- 機能追加のついでに小さく整える
- 関数が太ったら、その場で分割する
- 名前を見て「説明が必要」なら直す
といった小さなリファクタリングの習慣です。
リファクタリングは、
「一気に綺麗にするイベント」ではありません。
毎回ほんの少し整えるだけで、
コードは“育ちっぱなし”にならずに済みます。

逆に言えば、
「後から触れなくなったコード」はほぼ例外なく、
この工程がすっぽり抜け落ちています。
第3位:柔軟すぎるPython機能の乱用
Pythonはとても柔軟な言語です。
短く書けて、自由度が高く、「賢そうなコード」も簡単に書けます。
ですがその柔軟さは、
初心者にとっては最大の落とし穴にもなります。
よく見かけるのが、次のようなケースです。
- 1つの関数で何でもやってしまう
- 状態をあちこちで書き換える
- 「分かる人だけ分かる」トリッキーな書き方をする
書いている本人は、
- 短く書けた
- うまく動いた
- Pythonっぽい気がする
と満足しがちです。
しかし数か月後、そのコードは
読むだけで消耗する存在に変わります。
特に危険なのが、
- 暗黙的な前提に依存した処理
- 実行順序に強く依存する状態変更
- 「これを触ると全部壊れそう」な密結合
Pythonは、こうした設計でも動いてしまいます。
だからこそ、負債が気づかれにくいのです。
ここで意識してほしいのは、
「短く書ける」と「分かりやすい」は別物ということです。
未来の自分に優しいコードは、
- 処理の流れが素直
- 責務がはっきりしている
- 変更点の影響範囲が読める
こうした特徴を持っています。
Pythonの柔軟性は、
制限をかけて使ってこそ武器になります。

「書けるから使う」のではなく、
「後から直せるか?」を基準に選ぶ。
それだけで、触れなくなるコードは確実に減っていきます。
第4位:コピペとAIコードの“理解なき導入”
Python初心者が一気に「触れないコード」を量産してしまう原因として、
最近特に増えているのがこのパターンです。
ネット検索、Qiita、ブログ、そしてAI。
今は「答えのコード」が簡単に手に入ります。
その結果、
- 動くからそのまま貼り付ける
- 細かい部分はよく分からないけど放置する
- 自分では説明できない処理が増えていく
こうしたコードが、知らないうちにプロジェクトの中核を占めていきます。
特にAIが生成したコードは、
一見とても綺麗で、それっぽく見えます。
ですが、
- なぜその設計になっているのか
- どこまでのケースを想定しているのか
- エラー時にどう振る舞うのか
これを理解しないまま使うと、
「壊れたときに誰も直せないコード」になります。
初心者のうちは、
「全部自分で書かないとダメ」
「コピペやAIはズル」
と考える必要はありません。
大事なのは、
- この処理を自分の言葉で説明できるか
- 不要な部分を削除できるか
- 変更するとき、どこを触ればいいか分かるか
この3点です。
もし説明できないなら、
そのコードはまだ「自分のもの」ではありません。

コピペやAIは、
作業を速くする道具ではありますが、
理解を省略する免罪符ではないことだけは、
忘れないでください。
初心者のうちに潰すべき「負債を生む癖」と対策
型・戻り値・責務を曖昧にしない
「後から触れなくなるコード」に共通しているのが、
何が入力で、何が出力なのか分からないという問題です。
初心者のコードを見ていると、次のような状態がよくあります。
- 引数に何を渡す想定なのか書かれていない
- 戻り値があるのか、Noneなのか分からない
- 失敗時にどうなるのか想像できない
これはセンスの問題ではありません。
「考えなくても動いてしまう」Pythonの特性が原因です。
だからこそ意識してほしいのが、
- この関数は何を受け取るのか
- 何を返すのか
- 失敗したらどう扱うのか
この3点を、コード上で表現することです。
型ヒントやDocstringは、
「上級者のためのもの」ではありません。
未来の自分に向けた設計メモとして使うだけで、
数か月後の読みやすさは驚くほど変わります。
また、1つの関数が、
- データ取得
- 加工
- 表示・出力
すべてを同時にやっている場合、
その関数はすでに「触れなくなる予備軍」です。

関数の責務は1つだけ。
この原則を守るだけでも、保守性は大きく改善します。
「最初から綺麗」を目指さない代わりに、直せる形にする
保守性を意識し始めた初心者が、
次にハマりやすい落とし穴があります。
それが、最初から完璧な設計を目指してしまうことです。
・クラスを細かく分けすぎる
・将来使うか分からない拡張ポイントを用意する
・抽象化しすぎて、何をしているか分からなくなる
これらはすべて、
「保守しやすくしたい」という善意から生まれます。
ですが結果として、
- 修正箇所を追えない
- コードを読むのに時間がかかる
- 結局誰も触らなくなる
という、本末転倒な状態になることも少なくありません。
ここで覚えておいてほしい考え方があります。
「最初から綺麗」より、「あとで直せる」ほうが重要です。
初心者のうちは、
- まず素直な処理を書く
- 処理の流れが追えることを優先する
- 必要になったら分割・抽象化する
この順番で十分です。
直せる形とは、
- 処理の責務が大きく壊れていない
- 変更点の影響範囲が想像できる
- 不要になったら消せる
こうした状態を指します。
完璧な設計は、
経験と失敗の上にしか乗りません。

だからこそ初心者の今は、
「未来の自分が直せる余地を残す」
それだけを意識して書いてみてください。
保守性を底上げする「最低限の開発ルーティン」
書く前にやること
「後から触れなくなるコード」を避けるために、
一番効果があるのはコードを書く前の5〜10分です。
多くの初心者は、
思いついた瞬間にエディタを開いて書き始めます。
その結果、
- 処理の流れが頭の中だけにある
- I/Oとロジックが混ざる
- 後から分解しづらい構造になる
という状態になりやすくなります。
そこでおすすめなのが、
いきなりPythonを書かないという習慣です。
具体的には、
- 日本語で処理の流れを書く(疑似コード)
- 入力・出力・計算を分けて考える
- 「ここが変わったらどこが影響するか」を想像する
これだけで、設計の質は大きく変わります。
特に重要なのが、
I/O(ファイル・API・表示)とロジックを分ける意識です。
I/Oと計算処理が混ざっているコードは、
- テストしにくい
- 修正の影響範囲が読めない
- 「触るのが怖い」状態になりやすい
という特徴があります。
逆に、
- 入力を受け取る部分
- 計算・判断する部分
- 結果を出力する部分
これらを頭の中で分けてから書くだけで、
コードは「あとで直せる形」に近づきます。
書く前の数分は、
未来の自分が絶望しないための投資です。

急いでいるときほど、
このステップを省かないようにしてみてください。
書いた後にやること
コードを書き終えた瞬間は、
「ちゃんと動いた」「今日はここまででいいか」と気が緩みやすいタイミングです。
ですが実は、
後から触れなくなるかどうかは“書いた直後の行動”でほぼ決まります。
最低限、次の3つだけは習慣にしておくと、
保守性は大きく変わります。
- 自動フォーマッターを通す
- 簡単でもいいので動作確認を書く
- 「気になった違和感」をそのままにしない
まず、自動フォーマットです。
インデントや改行、空白は、
人が頑張って揃えるものではありません。
ツールに任せることで、
- 見た目のばらつきが消える
- 読むときのストレスが減る
- 内容そのものに集中できる
状態を作れます。
次にテストですが、
立派なテストを書く必要はありません。
「この入力で、この出力になる」
それを1つ確認できるだけでも十分です。
テストが1つも書けないコードは、
ほぼ確実に
- 責務が大きすぎる
- I/Oとロジックが混ざっている
という問題を抱えています。
最後に一番大事なのが、
違和感を放置しないことです。
「この関数、ちょっと長いな」
「名前、分かりにくいな」
こう感じた瞬間が、
唯一、直す気力が残っているタイミングです。

5分でできる修正を積み重ねるだけで、
コードは「触れなくなる」状態から確実に遠ざかります。
書籍で一段レベルを上げたい人へ
ここまで読んで、
「考え方は分かったけど、体系的に学び直したい」
そう感じた方もいると思います。
そんな方に向けて、
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Pythonの設計思想まで理解したい人向け
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「なぜその書き方が良いのか」を設計・思想レベルで解説してくれる一冊です。
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ちょうどいい距離感で書かれた一冊です。

悪い癖が固まる前に読んでおくと、
学習ルート全体がかなり楽になります。
よくある誤解・注意点
ここまで読んだ方が、
特に勘違いしやすいポイントを整理しておきます。
コメントを書けば保守できるようになる?
答えはNOです。
処理をそのまま日本語にしたコメントは、
コードと一緒に腐ります。
重要なのは、
- なぜこの処理が必要なのか
- 他の選択肢をなぜ捨てたのか
といった判断理由を残すことです。
「何をしているか」はコードを読めば分かりますが、
「なぜそうしたか」は、書いた本人しか分かりません。
クラス化すれば綺麗なコードになる?
これもよくある誤解です。
責務が整理されていないままクラス化すると、
- 巨大なクラスが生まれる
- 状態が分からなくなる
- 修正が怖くなる
という、別の地獄が始まります。
クラスは問題を整理できてから使うものです。
混乱を隠すための道具ではありません。
動いているコードは触らないほうが安全?
短期的には正しく見えますが、
長期的には逆です。
動いているうちに小さく整えなかったコードほど、
「触ったら壊れそう」な存在になります。
安心して触れる状態を保つことが、
一番の安全策です。
まとめ
Pythonスクリプトが「後から触れなくなる」原因は、
決して難しい技術を知らないことではありません。
多くの場合、
- 意図が残っていない
- 小さな歪みを放置している
- 理解できないコードを抱え込んでいる
こうした日々の判断の積み重ねが原因です。
大切なのは、
- 未来の自分が読むことを前提に書く
- 完璧より「直せる形」を優先する
- 違和感を感じたら、その場で手を入れる
この3つを意識することです。
Pythonは、
雑にも書けるし、丁寧にも書ける言語です。
だからこそ、
初心者のうちに身につけた癖が、そのまま将来のコード品質になります。
今日書く1行が、
数か月後の自分を助けるか、苦しめるか。
少しだけ立ち止まって、
「これは後から触れるかな?」と考える習慣を、
ぜひ今日から取り入れてみてください。
参考文献
- Clean Code, Technical Debt, and Documentation in Python
- Technical Debt: Causes, Types, and Management Guide
- Technical Debt Explained: Types, Causes, and Consequences
- 7 Rules for a Maintainable Python Code Base
- Mastering Python Code Quality – Tools That Actually Prevent Technical Debt
- 技術的負債とは何か?コードが読めなくなる本当の理由
- 保守できないコードの特徴と改善の考え方
- Untouchable Code: Why Developers Are Afraid to Change Code
- 技術的負債が溜まるコードの共通点と対策
- 技術的負債をどう返すか|Software Design 特集
よくある質問(Q&A)
- QPython初心者ですが、今から直しても遅くないですか?
- A
まったく遅くありません。
むしろ、
「後から触れなくなる経験」を一度している人ほど、
改善スピードは速くなります。気づいた今が、一番早いタイミングです。
- Q昔書いたコードは全部書き直したほうがいいですか?
- A
いいえ。
まずは、
- 今も使っているコード
- 今後触る可能性があるコード
から、小さく整えていくのがおすすめです。
全部を一気に直そうとすると、
確実に挫折します。
- QAIを使うと、保守性は下がりますか?
- A
使い方次第です。
理解し、説明できる状態で使えば
生産性は大きく上がります。逆に、
「動いたからOK」で放置すると、
一番触れなくなる原因になります。AIは考える代わりではなく、
考えたことを形にする補助として使うのが理想です。














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